ルージュの森の魔女

「彼らが《ダークフィア》かわからないけど、あなたたちより前に森に入ってきたからトラップを起動させてそこら辺さ迷わせていたのよねぇ。なんか嫌な感じだったし…。でも結界が壊れた反動でトラップの魔力が弱まったせいか彼らもそこから抜け出せたみたいね……」

いつの間にか外に出て背後にいるアリーナにレオドールは慌てて華奢な腕を掴む。
もう、彼の頭から伝説の魔女という単語は抜けていた。

「おい!外に出たら危ないだろ!」

つい素の口調に戻ったレオドールは正面から彼女を怒鳴り付ける。
しかし当の本人は気にした様子もなく目の前に広がる濃い暗闇を見続けると底冷えのするような声音で言い放った。

「――あなた、私を誰だと思ってるの?」

普通の人間であればその声音に震え上がるのだが、この前に立つ男は今までの人間とはすこし違うようだった。

「何言ってるんだ!奴等はお前を狙ってるんだぞ!ここは俺達に任せて大人しく部屋で待ってろ!」

予想外の反応に、アリーナは驚いたように目を見開く。


そして、次の瞬間笑っていた。


いきなり細い身体を震わせて笑うアリーナの姿に、三人はきょとんとした表情で見つめる。

レオドールにいたっては真面目に話をしているのに、いきなり笑われたため段々腹ただしさを感じていた。

「何がおかしい」

「いやー、ごめんなさいね。私に対して真面目に怒る人久々に見たから、つい面白くって……。それに、私に用があるなら面と向かって話を聞かなくてはね。――そうでしょ?新しいお客さん……」

そういって微笑みながら誰もいない暗闇を見つめるアリーナに、レオドールは呆れたようにため息を吐くとアリーナを背後に庇うように身構えた。