君には、絶対に…

“伊原君と話したいなぁって思って…。”

“初めて男の子の家に電話した。”

こんなことを言われて、嬉しくない人なんていないだろう。

少なくとも、俺はこんなことを初めて言われたから、嬉しくて堪らない。

それが、たとえ、自分のことに興味がないと分かっていても、特別な気持ちがこもっていないと分かっていても、この言葉は嬉しかった…。

特別な感情が入っていないと分かっていても、もしかしたら…って勘違いしてしまいたくなってしまう…。

「松本君ってさぁ―――」

ただ、勘違いしてしまいたいと思っても、そんなことは無意味だと、すぐに気付かされる…。

今井さんが俺と話したいというのは、睦のことを話したいだけから…。

俺のことが知りたいわけじゃない…。

睦のことが知りたいだけなんだ…。

だから…彼女の瞳に俺は映らない…。