君には、絶対に…

バスケがやりたければ、バスケ部の仲間でやれば良い。

なのに、バスケが好きでもなければ、興味もないと言っているのに、俺にバスケをやらせようと、暇さえあれば俺の周りをウロウロしてきた。

それだけじゃなく、学校が終わってから、無理矢理バスケをやらせようとまでしてくるほど、ものすごくしつこい性格だった。

何より、あんまり話したこともなく、友達でもないのに、いきなり下の名前で呼ぶから、ものすごく鬱陶しい存在だった。

そんな日々を1ヶ月近く過ごして、ついに根負けし、俺は1度だけのつもりでバスケをやることにした。

睦に連れられて行った市民体育館に、俺達より先にいたのが将人だった。

「君が伊原洋介か…。よろしく。」

睦とは打って変わって、将人はものすごく口数が少なくて、人見知りをするタイプなのかと思えるところだと思うけど、逆に、俺にはものすごい威圧されているように感じた。

それは、たぶん、俺が将人に威圧感を感じた原因は中学生なのに180cmぐらいの身長があるからかも知れない。

将人は一見普通に見えるんだけど、すごく綺麗な目と凛々しい顔をしていて、何より睦に負けず劣らずの有名人だった。

睦とは違うチームだったけど、ミニバスのチームでキャプテンをやっていて、何かのミニバスの大会の決勝戦では、いつも睦のチームと将人のチームがやり合っていたと言っても過言じゃないぐらい、よく試合していたと聞いたことがあった。

そんな2人がこんな普通の公立中学校にいることが不思議に思ったことがあるぐらいだった。

でも、それ以上に、そんな2人と、なぜかバスケのコート上に一緒に立っている自分の方が不思議で、ものすごく違和感があった。