君には、絶対に…

「まぁ、勝ったから良いけど、最後のシュートは明らかに将人にパスするところだったろ~!」

体育館のロビーで少しくつろぎ始めた時、睦が少し怒ったような口調で言った。

「いや、何となくだけど、パスしたら負ける気がしたんだよ。」

「は?」

俺の言った言葉を聞いて、睦はちょっと不機嫌そうな感じになっていた。

「あれは、洋介君のナイス判断だったと思うわよ?」

「あ、未来ちゃん…。」

「あの時ね、将人君についてたディフェンスはパスカットを狙って、ピッタリくっついてたから、パスしてたらカットされて、3Pでも決められて負けるか、同点にされて、延長で負けるか、どっちかだったと思うから。」

未来先輩は笑ってそう言いながら、俺と睦が座っているソファーの前に座った。

それに続いて、未来先輩の後ろに立っていた今井さんも、未来先輩の右横に座った。

「まぁ、あんな場面で、決められるとは思ってもいなかったけどね…。しかも、2本連続で…。相変わらず、すごいね!洋介君は!!」

今同じ場面で、同じようにシュートを放ったところで入る気がしない。

あの2本のシュートは奇跡的だったんだ。

「それより、洋介君、右足大丈夫?まだ閉会式まで少し時間あるでしょ?だから、医務室行こう?連れて行ってあげ―――」

「あ!じゃあ、閉会式始まる時に俺が呼びに行くよ!だから、今井!ちょっとこのアホを医務室連れて行ってやってくんない?あっちにあるからさ!」

「は、はぁ!?お、お前何言って―――」

「うん、分かった!」

神妙な面持ちで話す未来先輩の言葉を遮り、睦はいつもの調子で、ちょっと冗談っぽく笑って話した。

ただ、いつもと違う言葉、ある意味、とんでもない爆弾発言をしてきたから、俺はただ焦り始めた。