君には、絶対に…

俺が抜かれ始めてからも、マンツーの状態から変えることなく、試合を進めるしかなかった。

マンツーの状態で、何とか抑えてきたという状況なのに、ここで慣れないゾーンに変えたら、一気に流れを持っていかれて、負けてしまうと思ったから…。

だから、俺は何とか右足を動かして走っていた。

でも、俺が何とか動いていても、結局は完全じゃない…。

いつも出来ていることが出来ない状態の俺に、相手を止める術などなかった…。

相手はとことん俺のところから仕掛けてきて、その結果、残り2分というところで、35対32まで追いつかれてきていた…。

ここまで抜かれているわけだから、睦も将人も気付いているだろう。

だから、俺のところには、極力パスを出さずにオフェンスを組み立て、何とか追いつかれないように、必死にプレーしていた…。

でも、それも…限界だった…。

「お~っと!!残り1分を切ったところで、ついに!Mayが1点逆転されました!!」

41対42…。

前半あった10点もの貯金を使い果たした挙句、残り1分を切ったところで、ついに逆転を許した…。

去年とは全く違う状況だ…。

去年も体力的にも限界だったけど、足は動いた。

でも、今は右足に痛みがあって、その痛みは増すばかり…。

1点差とはいえ、去年以上に厳しい状況だった。

俺は肩で息をしながら、オフェンスのポジションにつくため、ゆっくりと歩いていた…。

歩き始めて、俺は気付く…。

ついに、俺の右足にも限界が近付いてきていた…。

いや、もしかしたら、もう限界なんてラインは振り切ってしまっているのかも知れない…。

右足が震えていただけだったはずなのに、右足のふくらはぎがピリピリとした痺れ、痛みを感じ始め、右足のふくらはぎに流れる血液の音まで聞こえてくる…。

右足を軽く一歩踏み出すごとに痛みを感じ、次第に痛みは大きくなる…。

もしかしたら、1分後には立っていられないかも知れない…。