君には、絶対に…

「ついに!今年度の優勝チームを決める試合が、今始まろうとしています!!」

相変わらず、うるせぇなぁ…。

コートサイドに立ちながら、去年と同じように、場内アナウンスがうるさく感じて仕方がない。

でも、そう思っているのは、この体育館内で俺だけなのか、ギャラリーはアナウンスを聞いて、声を張り上げ、盛り上がっている。

「では、今年度の優勝に王手をかけている2チームをご紹介致しましょう!まずは、Aブロックの覇者!皆様ご存知のこのチーム!去年初出場・初優勝を果たし、今年連覇を狙うチーム!“May”!!」

去年と同じように、コートサイドからギャラリーに手を振りながら、俺達はコート中央へと歩き出した。

去年、観客に騒がれることに対して、ただ緊張して、他のことなんて何も考えられなかった。

でも、今年は違う。

去年同様、緊張は沸いてくるけど、去年とは違った緊張、プレッシャーを感じる…。

それは、去年と違って、色んな期待を肌で感じるからこそ、プレッシャーが芽生えてきているのかも知れない。

「緊張してるか?」

「うーん、少しはプレッシャーとか感じるけど、そこまでではないかな。」

「俺は緊張してる…。」

ギャラリーの方をボーっと見つめて突っ立っていると、俺の右横に立っていた将人が真っ直ぐと前を向きながら、俺に話しかけてきた。

いつも緊張とは無縁といった雰囲気を漂わせている将人の口から、まさかそんな言葉が出てくるとは思ってもいなかったから、俺は本当に驚いた。

「去年以上に、今年は優勝したいからな。優勝しなきゃ自信が持てない…。」

「え?何に対しての自信だ?バスケなら巧いじゃん。」

「バスケじゃない。気持ちの問題っつーか…―――」

「チーム紹介が終わったところで、優勝決定戦を開始したいと思います!選手の皆様は、コート中央に並んでください。」

将人の話の途中で、邪魔くさいアナウンスが入って、結局何に対しての自信がほしいのか聞けなかった…。

俺は話の続きが気になっていたけど、試合中央に並ぶ直前、円陣を組んだ瞬間の将人の表情は、真剣なものに変わっていて、試合モードに切り替わっていた。