君には、絶対に…

「じゃあ…私は邪魔だろうから、将人君達のところに行こうかな!あとは、若いお2人で~!」

「なっ…!!」

話が終わってすぐ、未来先輩は徐に立ち上がりながら、とんでもないことを笑って言って、手を振りながら、体育館の中に走って入って行った。

今井さんは、少し動揺した表情を見せたから、俺も一瞬にして緊張し始めていた。

未来先輩の言葉のおかげで、言うまでもなく、雰囲気はちょっと重かった…。

「な、何言ってんだかね~。あはは~…。」

話さない限り、どんどん空気が重くなるだけだと思ったから、俺は何とか笑って話すと、今井さんはぎこちない笑みを浮かべた…。

もちろん、話なんて続くはずもなかった…。

何でこんな空気にしていくんだよ…!!

何とか笑顔を作って、がむしゃらに話し続けていたけど、内心未来先輩に対して、むかついていた。

普通に話せるようになり始めていたのに、また逆戻り…。

話が噛み合わず、沈黙が生まれてしまう…。

こういう空気って経験したことがなかったから、どういう話をすれば良いのかさえ、俺には分からなくて、ただただ無意味に、言葉を羅列し続けていた…。

「ねぇ、伊原君?右足…大丈夫なの…?」

もう話すことも尽きてきて、しばらく黙っていたら、今井さんが小さな声で話しかけてくれた。

緊張した感じがしなくもなかったけど、話してくれたからこそ、俺は少し安心して、彼女の顔を見ることが出来た。

今井さんの表情は、ハーフタイムの時に見た表情よりも、今の方が数倍心配そうで、真剣な表情をしていた…。

心配かけて悪いと思うべき場面だと思うんだけど、俺はちょっと嬉しかった。

心配されて当たり前なことなのかも知れないけど、好きな人が心配してくれるっていうことが、ものすごく嬉しかったんだ。

「大したことないよ?大丈夫、大丈夫!」

俺はそう言いながら立ち上がって、その場で軽くジャンプして見せた。

その様子を見た今井さんは少し安心した表情で笑っていた。