「ごめん!俺がスリップして、足引っ張ってるわ…。」

「いや、スリップだから仕方ねぇよ!後半で何とか出来るっしょ!」

睦は少し息を荒げながら、俺の肩を叩いて笑って言ってくれた。

そう、ただのスリップならどうってことはない。

スリップなら、問題なんてないんだ。

でも、スリップとかっていう生易しい問題じゃない…。

「洋介。とりあえず、ディフェンスをゾーンに変えよう。マンツーだと対応出来ない。ゾーンの練習なんてしてないけど、どうにか出来るか?」

今までは1人が1人につくマンツーマンディフェンスだった。

だから、1人が1人を抑えれば良いだけのディフェンスだったんだ。

でも、今の状態じゃマンツーでついていても、俺のところから抜かれてしまう…。

だから、3人で三角形のゾーンを作って、自分の前に来た人を抑えて、抜かれたら後ろと一緒に抑えるというゾーンディフェンスに変えようということだった。

「何とかする。もし、ゾーンで無理なら、もう1回マンツーに変えよう!今、俺疲れてるだけだからさ!」

ゾーンで守ったことなんてないから、不安は不安だった。

だから、やれるだけやってみて、もし負けそうなら、マンツーに戻す方向で話を進めた。

マンツーに戻した時、俺が頑張れば何とかなる。

俺は問題なんだ。

「洋介君!ちょっと良い!?」

コートサイドのギャラリーから、未来先輩が呼んできたから、俺は未来先輩の方に近付く。

未来先輩の表情がよく見えるところまで近付くと、未来先輩は、今までに見せたことないほど、神妙な面持ちをしていた…。