君には、絶対に…

「―――君!洋介君!聞いてる!?」

「ん…?あ、何すか!?」

色々と考えているうちに、俺は眠っていたようで、未来先輩は少し心配そうに顔を覗き込みながら、俺に話しかけてきていた。

「そろそろ試合だから、体育館戻ろうって…。大丈夫?」

「大丈夫ですよ!大丈夫、大丈夫!」

俺はそう言いながら席を立ち上がったんだけど、未来先輩の表情は変わっていなかった。

「本当に大丈夫だから。ただ疲れてただけ!」

俺は何食わぬ顔して、笑ってそう言いながら、会計しているみんなのところに向かって歩き出した。

でも、正直に言うと、自分でも違和感がある…。

いつも以上に疲れているし、第3試合の終盤ぐらいから、右足の震えが止まらない…。

いつも通りの俺を装って歩いているつもりなんだけど、何か右足に力が入らない…。

踏ん張って地面を蹴ることが出来ない…。

こんなこと今までなかったから、どうなっているのかさえ分からなかった…。

「おっしゃぁ!!この試合勝てば優勝決定戦だ!!ぜってぇ勝つぞ!!」

「当たり前だ!!」

試合が始まる直前、コートサイドで気合を入れ直して、俺達はコートに足を踏み入れた。

今は他のことに気を取られている場合じゃない。

俺は自分自身にそう言い聞かせて、震える右足を最初にコートに踏み入れた。

そして、また試合開始の笛の合図とともに、試合が始まった。