君には、絶対に…

9月23日。
昨日なかなか寝付けなかったけど、寝不足っていう感じもなく、良い目覚めだった。

目が覚めてから、自分の部屋のカーテンを開けてみると、天気予報では曇りだったのに、ものすごい太陽の光が差し込んでくる。

何気ないことなのに、なぜか朝日を見ただけで、今日の大会で優勝出来るような気分になった。

朝食もしっかりと食べて、バッシュとかを詰め込んだバッグを背負い、待ち合わせ場所に向かうべく、家を出た。

大会に対しての緊張感や不安は、さほどない。

でも、昨日なかなか寝付けずにいたほどの緊張感は、今でもしっかりとある。

その緊張感は、待ち合わせ場所に近付くにつれて、次第に膨らんできて、待ち合わせ場所が目に入った瞬間、緊張しすぎて、足が重くなった。

そう、待ち合わせ場所に、今井さんも来ることになっていて、今井さんは、誰よりも待ち合わせ場所にいた。

だから、気持ちは弾んでいるんだけど、嬉しくてしょうがないんだけど、すごく気が重い…。

でも、このまま突っ立っていても仕方がないと、自分自身を奮い立たせて、俺は力強く右足を踏み出した。

「あ!伊原君!おはよう!」

俺が近付いてくるのに気付いて、今井さんは笑顔で大きく手を振っているのが見えたから、俺の沈みかけていた緊張感がぶり返してくる。

「もしかして、緊張してる?でも、当たり前だよね!今日が大会当日だもんね!」

いやいや、君がいるから、緊張してるんだよ…。

俺は何も言い返すことも、今井さんの顔も見ることが出来ず、ただ今井さんの格好を観ていた。

学校じゃ制服だから、いつもと違って私服を着ているだけで、ものすごく新鮮だ。白黒のボーダーの長袖に、黒いスカート、黒のパンプスと、すごくシンプルな合わせ方をしている。

こんな格好をしている同級生なんて見たことがなかったから、まじまじと見入っていると、今井さんは少し焦った表情で、自分の服を見る。