『スパンッ!!』

「第23回バスケットボール大会中学生の部決勝戦も、試合終了の時間が近付いてきています!!しかし、ここに来て、チーム“May”!怒涛の追い上げを見せています!!」

「まだいける!!まだいけるぞ!!諦めんなよ!?」

チームメイトである睦(あつし)が俺と将人(まさと)に向かって、大声で叫ぶ。

そうは言っても、残り時間は20秒を切ろうとしていて、38対36と、2点差で負けている状況だ…。

勝てる可能性がないわけじゃないけど、勝てる可能性はかなり低い…。

でも、俺はどうしても勝ちたかった…。

だって、俺達がチームを結成してから初めて出場した大会だったから。

『ダム…ダム…ダム…。』

残り時間を削るために、相手チームはボールをキープしながら、オフェンスを仕掛ける。

『13…12…11…。』

少しずつ、でも、確実に残り時間は減り、負けが確定する瞬間が近付いてくる。

それを察して、ギャラリーの声も心なしか小さくなってきた。

このままじゃ負ける…。ここまで来て、負けたくない!!

頭の中でそう強く思った瞬間、俺の体は無意識に動く。

『パスンッ!』

「おっと!!ここで、伊原君がパスボールをカット!!一気にコートを走り抜けます!!」

勝ちたい。どうしても優勝したい。

俺の頭には、もうそれしかなくて、とにかく無我夢中だった。

「洋介(ようすけ)!!行っちまえ!!」

俺の耳には、もうギャラリーの声も、実況の声も、仲間の声でさえ聞こえていない。

ただ感じるのは、この空間の熱気と高ぶる鼓動だけだ。