君には、絶対に…

もしかしたら、睦は未来先輩のことが好きなのかも知れない。

睦のテンションの浮き沈みを思い出してみて、改めてそう思った。

でも、俺がそう思ったからって、何か出来るわけじゃないし、何より、今まで誰かを好きになったことがない俺にとって、人を好きになるっていうことの意味がよく理解出来なかった。

それに、付き合うっていう意味もよく分からないし、イメージも出来ない。

ただ、今日の睦を見ていると、人を好きになるっていうことは、楽しくもありつつ、苦しいことなのかななんて、しみじみ思う。

俺にも誰かを好きだと思う日が来るのかと思うと、ちょっとめんどくさそうで、とてもじゃないけど、楽しみには思えなかった。

だって、今日の睦は、すごく辛そうだったから。

俺は誰かを好きになったりするよりも、今はバスケのことを考えたり、バスケをやっている時だけが楽しいと思える時間だった。

だから、新学期になるまでの短い期間、俺は部活に入っているわけでもないのに、とにかくバスケばかりしていた。

そんな毎日を過ごしているうちに、睦が未来先輩のことを好きなのかも知れないとか、将人が未来先輩と付き合っているのかも知れないとか、そういうことは、俺の頭から消えていた。

とにかくバスケが巧くなりたい。

ただそれだけしか、俺の頭にはなかった。