君には、絶対に…

その後、いつも行っているファミレスに行き、夕食を食べながら、2人で今日の試合のことを話していた。

「いやぁ、洋介のあのパス!マジで痺れたね~!!いつあんなプレー出来るようになったんだよ!」

話していくうちに、睦からさっき感じた刺々しい雰囲気や、ぎこちない笑顔がなくなり、いつもの睦に戻っていた。

そんな様子を見て、少し安心はしていたけど、やっぱりどこか引っかかって、俺の方が何かギクシャクした笑顔になってしまう…。

「あれは、未来先輩に言われた通りにやっただけだよ。まぁ、マグレだよ、マグレ。」

珍しく褒められて、少しテンションが上がってしまったこともあって、出してはいけないと思っていた未来先輩の名前を、不意に出してしまった。

その直後、睦の様子は、また一変する。

「未来先輩…か…。」

また刺々しい雰囲気を漂わせ、低い声で話す睦を見ていて、嫌な汗が背中を伝ってくる…。

こんな睦の様子を見たことなんて、今まで1度もなかったから、どうしたら良いのか分からず、言葉が出てこない…。

「なぁ、洋介…?」

「ん、ん?な、何?」

俺が動揺していると、睦が窓の方を見ながら、また低い声で俺に問いかける。

「あの2人ってさぁ…付き合ってんのかな…?」

この言葉を最後に、睦は何も話さなかった…。

俺は何て言葉をかけたら良いのか分からなくて、家に帰ろうと切り出した。

睦と別れて、1人で夜道を自転車で走りながら、睦のことを考えていた。