君には、絶対に…

3分間の休憩時間になって、俺が体育館の隅に座っていると、未来先輩がスッと俺の横に座ってきた。

でも、あまりにも散々な試合内容だったし、未来先輩に迷惑かけっぱなしだったから、俺は未来先輩の顔を見る余裕がなかった。

「すいません…。パスコースは見つからないし、どうしたら良いのか分からなくて、どんどんムキになっちゃって…。未来先輩の良さ…潰してますよね…。」

俺がため息混じりに話すと、未来先輩の方からも小さなため息が聞こえた。

そして、しばらくの間、2人で並んで座りながら、ボーっとコートで、遊び半分でバスケをしている睦と将人を見ていた。

「ねぇ、洋介君?この試合、勝ちたい?」

「そ、そりゃ、もちろん!!」

「じゃあ、簡単には出来ないかも知れないけど―――」

休憩時間なのに、あんなに余裕があって、楽そうな表情をしながら、バスケをやっている2人に、一泡吹かせてやりたい。

そう思って、俺は未来先輩にどう攻めれば、未来先輩を活かすことが出来るのか、その術を真剣に聞いた。

今まであんまり意識してやったことがない攻め方だから、俺は若干の緊張感と興奮を抱きながら、後半戦を迎えた。

『ダム…ダム…ダム…。』

未来先輩がドリブルをつき始めてすぐ、俺はゴールの下から3Pラインの外に走り出してパスをもらった。

「何だ?また仕掛けてくるつもりか?」

将人はディフェンスにつきながら笑って話しかけてきた。

でも、俺は将人の言葉なんて耳に入らないほどに集中し始めていた。

徐々に耳から音が入らなくなり、頭の中に未来先輩の言葉が過ぎってくる。