「おいおい!俺らのところにばっかり来るなよ~!洋介が“大会MVP”獲ったんだぞ!?“バスケ部でもない伊原洋介がMVPだったんだぞ!?”あいつのところに行くべきだろ!!」

気楽に話している中で、睦が困った表情をしながら、でも、悪戯に笑いながら、大声で所々強調して、そう叫んだ声が俺のところにまで聞こえてきた。

睦の言葉を聞いた人達は、一瞬にして止まっていた。

授賞式は、俺達の試合が終わってから1時間近く経っていたから、知っている人もそんなにいなかったんだろう。

俺としては、誰にも知られたくない事実だったから、ありがたい時間差だった。

でも、そんな実を睦の口から叫ばれてしまった…。

なぜか、背中が汗ばみ、額にも汗が浮かんでくる…。

頼むから、俺のところには来ないでくれ…!!

そう祈りながら、固まりかけていた首を何とか動かし、無言で窓の外へと目を向けた。

しかし、窓の外へと目を向けた瞬間、背後からものすごい数の足音が聞こえ、俺の周りは熱気に包まれる。