9月25日。
蒸すような熱気を感じていた昨日とは違い、今日は秋口らしい涼しさを感じる。

そんな涼しさを感じると、昨日のことが嘘だったようにも思えてしまう。

そう思えてしまうほど、俺は優勝したという実感が沸かない…。

でも、そんな気楽なことを思えていたのは、学校に着くまでのわずかな時間だった。

学校に着き、下駄箱でも、階段でも、クラスへ向かう廊下でも、いつもは感じない視線を感じる。

俺の思い過ごしのようにも思えたけど、微かにヒソヒソと話している内容が聞こえてくる。

みんながみんな、同じ内容を話していた。

それは、うちのチーム“May”が大会で優勝したという話だ。

確かに、地元の小さな大会だから、知っている人もいるだろうけど…。

そんなことを思いながら、俺は教室が見えるところまで来た瞬間、無意識に立ち止まる。

それは、教室の前に群がる人達が目に入り、睦と将人が囲まれているからだ…。

人付き合いが苦手なわけじゃないけど、好きではない。それに、チヤホヤされることに慣れているわけじゃないから、何か恥ずかしい。

だから、俺は人目に付かないように、身を小さくして、バッグで顔を隠しながら、何とか教室へと入ることに成功し、窓際の自分の席までたどり着いた。

しかし、席に着くや否や、何人かの男子が俺の席まで駆けつけたけど、あの2人よりも少ない数だったし、いつも話しているような人達だったから、気楽に話をしていた。