女好き彼氏



震えて小さく、聞き取りにくかった声は徐々に大きさを増していく。


玲の言葉の一つ一つに
どんどん感情が込められていって……


そのたびにあたしの心臓がバクバクと加速していく。


「だから、美夜をいじめたの。ひどいことしたの。
そんなことしても、悠雅に嫌われるだけだってわかってたのに……
でも……自分でどうしたらいいか、わからなくなって……

気がついたら、悠雅のことを殴ってた」


あたしはその玲の言葉で
あのときのことを思い出す。


それは、玲が教室に来て
あたしのことを金属バットで殴ろうとしたときのこと。


そのことを考えただけであたしの体はブルッと震える。


今、思い出すだけでもぞっとする。

あのときの玲の表情………。


全く感情がないかのような…
ううん、悲しかったのか辛かったのか
あたしのことが憎かったのか……


そんな感情があのときの玲の表情には入り混じっていた気がする。


「あたしは、美夜と悠雅にしたこと
 本当に後悔してる。
 許してほしいなんて言わない。
 信じてほしいなんて言わない。
 でも……あたしの気持ちだけ聞いてほしい」



玲はそう言って自分の瞳から流していた涙を自分の手の甲で拭き取ると
真っ赤に腫らした目のまま、あたしのことを真っ直ぐに見つめる。


その玲の真剣な瞳をあたしも真っ直ぐに見つめて何も言わずにこくりっと頷いた。


あたしが頷いたことを玲は確認すると
大きな深呼吸をした。



「今までのこと全て……心から反省しています。
本当にごめんなさい。

もし……」


玲がそこまで言うとピタリっと言葉を詰まらせる。


真っ直ぐにあたしのことを見ていた瞳が一瞬だけ揺れて、一瞬だけ瞼をギュッと閉じる。


「もし!!
 あたしのことをまだ少しでも友達と思ってくれてるなら!!!
 もう一度、あたしの友達になってください!!!!!!」