あたしはおもいっきり目を瞑った。
そのとき、叫び声なんてあげる暇もなくて
ただただあたしが玲に殴られて倒れてしまう事を想像して、自分の歯をグッと食いしばった。
ガンッ!!
あたしの身体が温かく大きな何かに包まれたと思った瞬間、近くで鈍い音がした。
「う……そ…」
震える玲の声が聞こえると同時に
玲が握っていた金属バットが落ちる音も聞こえた。
あたしはおもいっきり瞑った目をゆっくりと開いて何が起こったのかを確認した。
「え?」
あたしは何故か悠雅に抱き締められていた。
え?え?
なんで?
あたしの頭は恥ずかしさのあまり混乱してしまう。
「大丈夫?」
耳元で悠雅の優しい声が聞こえた。
「えっと……大丈夫だよ?」
あたしは自分の顔を真っ赤にしながら悠雅から離れようと悠雅の肩を軽く掴んだ。
「そっか……」
呟くように囁いて悠雅君はあたしに一瞬だけ笑顔を見せて
あたしの耳に軽くキスをする。
「美夜…………………………
ずっと………ずっと…大好き………」
悠雅はそう呟いた。
弱々しい声で……。
あたしは………あたしは
本当に軽く掴んだだけだった。
なのに
悠雅は滑り落ちるみたいにゆっくりと倒れた。
頭から大量の血を流して………