廊下を少し歩いた所で木原杏理が口を開いた。 「ねぇ…神崎君」 「……」 「神崎君」 「……」 「………初純」 「…っえ?」 俺はくるっと振り返り、木原杏理の腕から手を離した。 「今、『初純』って言葉に反応した?」 「………」 …図星だ。 「本当に初純のこと、好きなんだね」 木原は小さく息を吐くと、こう言った。 「初純…、もう別な人、見てると思う」