僕が今こうして、もう陽が暮れ始めた夕方五時過ぎに、何度も何度も通学路を自転車で行ったり来たりと、当て所なく往復する理由が出来たのは、三日前の帰宅後の事になる。




制服の内ポケットに入っていたはずの生徒手帳が、忽然と姿を消していたのが発端だ。




生徒手帳だけなら、僕だって別に惜しみはしない。また再交付をしてもらえば良いだけの話だし。




多少小言を言われるかもしれないけど、そんな事、右耳から左耳へスルーパスしたり、ベッカム級のアーリークロスを上げるぐらいの余裕だってあるから、別に大した問題じゃない。背徳感は多少残るかもしれないけど、それは極々少量のモノだろう。




だけどあの生徒手帳には、どうしても無くしたくないし、無くせない物である、シキちゃんの写真が入っていた。