「ミラン、好きなんですか?」




その問い掛けで一気に距離を詰めた、僕と二宮家父は、夜通し男二人のサッカー談義に花を咲かせた。




つまり僕の居場所が、生まれたのだ。




目的のカニクリームコロッケはと言うと、言うに及ばず、語るに及ばず、ハル先生がアートとまで絶賛したその味は、僕ら、それを初めて食す人間達の心を、まるでオイルの染み込んだティッシュペーパー様に、一瞬にして、実に鮮やかに魅了した。




美味いっ!!何だこれは?!どう言う事なんだ??!




マキ先輩は、二宮家母を何故か師匠と呼び出し、サイオンジ先輩は、あまりの美味さにトキメキを覚えた様で、乙女モードに突入していた。




ハル先生は、思ってた以上の喜びを見せ、そりゃ~おばさんも作りがいがあるだろうな~って至福の笑顔を見せていた。




シキちゃんは───静かに食べていた。ただ黙々と食べていた。