彼女ノ写真

「ほら、早く」




僕は微笑んで、ファインダーを覗き込む。




「───そうだね。金星を撮る事にする」




シキちゃんの肩越しでは、金星が輝き踊る。




あの光は、どれくらい昔に生まれた光なのだろう?そんな事を思いながら、僕は一度だけシャッターを切った。




見晴らしのいい坂の上、金星の光に照らされる、彼女の姿を。




───カシャっ!




フラッシュとシャッター音───それを確認した彼女は、何も言わずに歩き出した。




その反応は実に彼女らしく、僕は少し慌てて、彼女の後を続いた───。




それは、ほんの数ヶ月前の話だ。でも何だか、とても懐かしく感じてしまう。




何故だろう?変な気分だ。センチメンタル───?違うか。