シキちゃんの泣いている姿は、嬉しいから、嬉しすぎるから泣くしかないのだと言う事が、明らかだった。それぐらい、可愛らしかった。




エークンに向って、ぶつける言葉、投げつける言葉、そのどれもが彼女の心根を正確に表す事はなく、まったく彼女らしい姿がそこにはあった。




ちょっと悔しいけれども、エークンの力によって、三日間ほど失われていた彼女を、彼女は取り戻していた。




笑顔を閉じ込めたのも彼なら、再び解放したのも彼だ。




「ぁ!」




サイオンジ先輩が、思わず声を漏らす。すぐさま、両手で口元を覆う。




声は、シキちゃんの声のおかげで届きはしないだろうけど、マキ先輩が人差し指を口の前に突き立てて、見慣れたジェスチャーをした。




目の前では、シキちゃんがエークンに抱き締められている。