「あ、マキ先輩」



「え?!」




その言葉と共に、シキちゃんは僕の両肩を強く突き飛ばし、二メートルほどの距離を素早くとり、先輩達がいる方向とは真逆を向く。




マキ先輩は、ニヤニヤと、何とも無粋な笑顔でこちらを伺い、サイオンジ先輩は、もはや乙女モードすら通り越した、名付けて、乙女モード改に突入、あの二宮さんですら、何だかウキウキソワソワした表情を浮かべている。




マキ先輩と目が合う。




何だろう、この初めて体験する恥ずかしさは。照れる感じは。




今まで体験した、すべての恥ずかしさを合計しても、こんな感じにはならないだろう。




僕ですら、こんな感じなのだ。




きっとシキちゃんは、今すぐ走って何処とは告げず、走り去りたい気分だろう。




口元が緩みきったマキ先輩が、その口を開き、言い放つ。




「ナイスっ!やるじゃない、少年!」




しっかりとはっきりと、今日も元気な親指が、青々とした大空に突き立てられた。