彼女ノ写真

そう言う事には、まったく興味が無かった僕にとって、宵の明星って言うのが、金星である事すら知らなかった。




金星を見つめる彼女の横顔が、僕にはとても神秘的で美しく見え、どうしてもフィルムに収めたくなり、押していた自転車を止め、カメラを取り出し、簡単に構えながら尋ねてみた。




「ねぇ、シキちゃん。一枚、いい?」




そんな僕の様子を見て、彼女は呆れたように微笑んで、彼女らしい返事をした。




「いーや。───そんな事より、エークン。あの金星でも撮りなさいな」




そう言うと、シキちゃんはおもむろに歩き出し、僕と金星の間に割って入る位置で、立ち止まり、そしてタタズんだ。