彼女ノ写真

その間、僕はいろいろな事をやった。




単純におどけて、シキちゃんにしれ~っとされたり、中学の時の先生の物まねをして、誰よそれ?って当たり前の突っ込みをもらったり、即興で作った落語を一席してみたりと、いろいろと自分の限界にまでチャレンジして、彼女の笑顔を見ようとした。




最終的に彼女が笑ってくれて瞬間は、スキャットを歌いながら、ジャグリングをすると言う、子供の頃、ショッピングモールで見た記憶の中の光景を演じた時だった。




慣れないスキャットで舌を噛み、その痛さで、宙に放り投げたマラカスが頭に当たり、コンっ!ジャシャン♪と鳴った軽快な音が、まるで彼女には程よい幕引きの音に聞こえたのか、彼女は口元に手をやり顔を下に向け、クスクスと声を上げて笑い出した。




彼女が、あははははーと、顔を上げて笑うまでの数秒で、僕はカメラを構えた。




今でも思う。この時の僕は、驚くほど素早い所作で彼女に、はっきりと正確にピントを合わせていた。