僕の吐息など大した効果は望めず、すぐにまた冷たくなってしまうのだけど、ほんの少しだけ元の体温に戻った指は、ハンドルを強く握る本能を思い出していた。
下り坂だけあって、両足は軽快なリズムで飛ぶ様に動きがついて行く。
マラソンなんかだと、上り坂より下り坂の方が難敵だと聞くけれど、今の僕には味方となってくれている様で、火照った身体に歩く速度が生み出す涼しさが、心地良く感じるくらいだった。
そんな些細な事で、僕は妙にテンションが高くなっていた。
前方の空に光る、金星の輝きに心捕らわれる。
夏の初め、珍しくシキちゃんと一緒に下校した日、その時もこんな風に僕は自転車を押していた。
あの時教わったんだ。あの輝きは金星の物である、と。
下り坂だけあって、両足は軽快なリズムで飛ぶ様に動きがついて行く。
マラソンなんかだと、上り坂より下り坂の方が難敵だと聞くけれど、今の僕には味方となってくれている様で、火照った身体に歩く速度が生み出す涼しさが、心地良く感じるくらいだった。
そんな些細な事で、僕は妙にテンションが高くなっていた。
前方の空に光る、金星の輝きに心捕らわれる。
夏の初め、珍しくシキちゃんと一緒に下校した日、その時もこんな風に僕は自転車を押していた。
あの時教わったんだ。あの輝きは金星の物である、と。
