彼女ノ写真

ここはずいぶん見晴らしがいい。吹きつける風が、下よりも冷たい。




一息ついて、僕は考えを改めた。




自転車に乗るのは止めにしようと。




簡単な話、寒いんじゃね?って事で。




今なお、蒸気を上げ続ける汗まみれの状態で、バケツに張った水は凍りはしないだろうけど、スーパーに出始めた冬ミカンなら、ひんや~り冷たく食べ頃に冷やせるだろう、この気温の中、これだけの傾斜と長さを持つ坂道を下り切ってしまったら、震えるほど寒いんじゃないか?と言う、弱々しい防衛本能が働いた訳だ。




そんな事で風邪なんか引いてしまったら、さすがにおバカ過ぎる。




自転車を押す手に何度か息を吐きかけて、僕は、ゆっくりと歩を進め始めた。