full moon

「ユウって彼氏いないの?」



「えっ何?」





大音量で流行りの曲を歌う友達の声にユウキの言葉が遮られる。



聞こえるようにと、ユウキの顔が近づいてくる。



「彼氏いないのって聞いたの。」





今まで気づかなかったユウキの香水が近くで香る。





「いないよ。」



「俺はどうか気にならないの?」



「どうかって?」



「俺に女いないかってこと。」



「あぁ。じゃあ彼女いるの?」



「うわっ。ユウ全然俺に興味ないっしょ。」



「そんなことないよ。」



「じゃあ番号教えて。あと俺彼女とかいないから。」





ユウキと番号の交換のために携帯を取り出す。



着信のサインが青く点滅していた。





「ちょっとごめん。トイレ行ってくるね。」



「番号交換するって言ったじゃん。」



「帰ってきたら交換しよ。」



「じゃあ待ってるから早く戻ってきてね。」





足早に部屋を出る。


トイレの個室にこもり電話をかける。