full moon

初めてショウの部屋を訪れた日から、放課後に寄り道をする場所が増えた。





私の制服の右ポケットには、ショウに渡された合鍵がいつも入っているようになった。





なくさないようにと鍵に取り付けた鈴が、時々ポケットの中で小さく鳴るとそれだけで笑顔になれた。







マンションまでの道のり。


鍵を使ってオートロックを開ける時。


慣れない料理と格闘したり、お風呂掃除をしてみたり。





何でもない事が嬉しかったり楽しかった。







何時間も1人で待ち続ける事も辛くなんてなかった。





玄関が開く音がすれば寂しさなんてどこかに消えてしまう。




「おかえりなさい。」




そう言ってショウを玄関で迎えれば、





「ただいま。」



必ずこの一言が返ってきた。






幸せだった。