初めて聞く話。

家に帰れば好きなひとがいる。それって嬉しいことだと思ってしまうけど、よく考えれば……そっか、その頃の弥生ちゃんには彼氏がいたんだよね。

「そんときに出逢ったんだ。友達がいなくて、ひとりで遊んでたあいつに」

トントントン、と跳ねるボール。向こうをむいたままの姿が、なんだか寂しげに見える。

「もういまは、お前も見た通り……友達がいっぱいできてるけど。なんか変になつかれちゃってさ、無視できねぇんだ」

なにが言いたいのか、なんでそんな話をしてくれたのか……ぜんぶ聞かなくてもわかった。

「いいよ。大切な友達なんでしょ?」

「え?」

19歳が小学生と友達だなんて、恥ずかしくて言えないのかもしれないけれど。

きっと篤紀にとっても、あの子たちは大事な存在なのだろう。

家に帰りたくなかった篤紀にとって、その子との時間は……唯一の救いだったのかも。