ティアラ2

「うん。……なら、好きでいればいいよ」
そう言って透吾は、あたしの髪の毛をクシャクシャにする。あたしはうんと頷いて、ホッとひと息ついた。

「ていうか、透吾も本命がいるんでしょ?」
そうだ、このひとには……特別な女性がいる。訊ねながら思い出すのは、この前、洗面所で見た歯磨きセット。

透吾はびっくりした表情であたしを見る。けれど、しばらくして口元をにんまり緩めた。
「誰かに聞いた?」
「……うん。車や家の中に女が使う物が置いてあったし、アカネさんも本命がいるって」
ずっと気になってたことだった。物はあるのに、そのひとを見かけることは一度もなかったから。

撮影で毎日、朝から晩まで透吾と一緒にいるけれど、彼の生活に女っ気なんてこれっぽっちも感じなかった。