もう飲み終えたのか、彼は人差し指に取っ手をかけ、マグカップをキーホルダーのように持っていた。

ぶらぶら揺れる、マグカップ。それを眺めながら、あたしは首を横に振る。
「休まなくても大丈夫。……今日はちゃんと寝るから、安心して」

多分、透吾は失恋したあたしを心配してくれている。ここに泊まるように言ってきたのも、きっと「家に帰ったあたしが、ひとりで落ち込むんじゃないか」って考えてくれたからだと思うの。

だからこそ、これ以上、迷惑はかけたくなかった。

「大丈夫だって」
呆れた顔をする彼に、あははと笑ってみせる。