また胸が苦しくなって、あたしはそれを吐き捨てるようにため息をついた。

「んで、一件落着だなって安心して部屋へ戻ったら、誰かさんは携帯を忘れてるし。おいおいって呆れながら届けにいけば、おふたりさんは揉めてるみたいだし」

てっきり邪魔しにきたんだと思ってたんだけど、この口調からしてそうではなさそう。

「……」
もう関係ない、と言った篤紀の顔。あたしは足の上に置いた鞄の取っ手を、ギュッと握りしめた。

すると透吾は、指に挟んでいた煙草を口に預け、空いた手であたしの頭を撫でてきた。
「帰ったら電話してみ? どうでもよく思ってる相手だったら、いつ出てくるかもわかんないのにずっと待ってるわけねぇって」