篤紀の姿はもう見えないのに、彼はまだ篤紀が向かった方向を眺めていて……。

「あんた、まさか……」
ニヤニヤ笑う横顔を見て、嫌気がさした。

「ほんとサイアク!」
こいつ、わざとあの場面で登場したんだ。「誰?」とか聞いてきたけど、あれがさっき話していた男だってことはわかってて……。
「意外だったなぁ。その辺にいるチャラチャラした男を想像してたけど、あんな爽やかな眼鏡男子がきみの彼氏だとは」
「~~~っ」

こいつ、マジで殴りたい!

拳を作って肩を震わせていると、透吾はパッとあたしから離れ、背を向ける。
「車出してくるから、そこで待ってな」

そう言って、彼は駐車場のほうへと歩いていった。