「……っ」
下まぶたから溢れそうになっている涙。こぼしたくなくて、急いであごを上にする。

たぶん嫌われた。
もう「疲れた」とかじゃなく、「冷めた」になったはず。

別れたその日に他の男と会って、その男の家から出てきたんだもの。誤解されたって仕方ない。

鼻水をすすりながら、自分の軽率な行動にげんなり。最低だ、って何度も心の中でつぶやいた。

すると突然、背後で砂を踏む音が。透吾がいたことを思い出して、慌てて目を拭くあたし。

「邪魔しちゃった」
あたしの頭の上に、ポンッと手を置いた透吾。その言葉に驚いたあたしは、目を見開いて、隣に並んだ彼を見上げる。