服をギュッと掴んだ、あたし。篤紀は立ち止まって、ハンドルを持つ手に力を入れた。

「……」
こっちに向ける表情も険しい。
「何もないの、このひととは……そういう関係じゃないし」
本当はいちから説明したい。彼はカメラマンだってことから、モデルをすると決めたことまでをぜんぶ。
でも、ゆっくりと話を聞いてもらえる空気ではない。だから「違う」ということだけは伝えたかった。

でも、篤紀は……。
「もう関係ない」
サッとあたしの手を払いのけ、原付バイクに乗り始める。

“関係ない”
グサリと胸に突き刺さった言葉。

払われた手を引っ込めることもできず、あたしはじっとその横顔を眺めた。