ティアラ2

浮き足、差し足、忍び足。店のなかに入ってからのあたしは、忍者みたいに腰を低くして、キョロキョロと周囲を見渡していた。
「……店長さん、どこだろ?」
別に悪いことをしてるわけでもないんだから、堂々としてればいいのかもだけど、そう思っていても、自然と体は壁や柱の影に隠れてしまう。

だって会いたくないもの。

正直に言えば、篤紀やあの子だけじゃなく、ほかの従業員とも顔を合わせたくない。最後の出勤がああいう形で終わったものだから、少し気まずいんだ。

「あ」
レジ付近で待っていると、店長さんが従業員専用の扉を開けて、フロアに出てきた。
あたしは軽く深呼吸をして、パートのおばさんと仲良く話す店長さんへと近づいていく。