ティアラ2

「ん」
車の中から透吾が、携帯電話をこっちに向けてくる。
「ん?」
なんだろ、と首を傾げながらも受け取ろうとすると、彼は「ちげーよ」と言ってあたしの手を避けた。
「赤外線」
「……ああ、そういうこと」
ん、だけじゃわからないっつーの。

お母さんたちがいないところじゃ、また偉そうな態度。だけど、もうイライラなんてしなくなった。
ふたつの携帯電話がそっと近づく。

「あの騒動のせいでいまはホテル暮らしだから、撮影はもう少し先になると思う」
「……わかった」
電話帳に登録しながら、うなずくあたし。透吾はサングラスをかけながら、シートベルトを締める。