4月の喧嘩を思い出す。日数を増やした理由を聞いても、篤紀は何も答えてくれなかった。

「住む場所は、お前んちの近くでもいいかなって思ってるんだ」

誰かさんは美容のために早く帰っちゃうからな、とクスクス笑う。

下唇を噛み、泣きそうになるのをこらえていると、彼は「な?」と微笑んできた。

数えるほどのお客さんしかいない、静かなフロア。

「ちょっとは我慢してくれよ」

本棚の影に隠れ、彼はそっとあたしにキスをした。

……遠く感じていた距離が、熱を帯びながら縮まっていく。

彼の青いエプロンをつかみ、うんうん頷くあたし。

篤紀は「ばーか」とからかいながら、ケラケラ笑った。