ティアラ2

「何言ったんだよ?」

「んー? 透吾は手が早いから気をつけてね、って忠告」

エツさんは透吾に嘘をついて、あたしに軽くウインクをし、この場を後にした。

またふたりになり、コホンと咳払いをした透吾は、仕切り直すかのように「ここの飯、結構イケるよ」と囁く。

「……」

アレって何?

交渉って……何の?

頭の中が謎だらけのあたしは、透吾に何を言われてもテキトーな返事ばかりしていた。

エツさんが運んできた料理を食べるまで。


「おいしかったぁ」

「だろ? この店はおととし、エツが貯金はたいてオープンしたんだ。俺も初めて食ったとき、あいつのこと見直したよ」

店を出て、駐車場までの道。

微かに膨らんだお腹をさわりながら、あたしは満足げに歩く。

隣に並ぶ透吾は、自分がほめられたわけでもないのに嬉しそうで、その横顔を見たあたしは「本当に仲がいいんだな」とふたりを微笑ましく思った。