ティアラ2

「あいつのこと……知らないの?」

「はい」

知らないから聞いてるんじゃない。

「え、何も聞いてないの?」

「……はい」

カメラマンだとは聞いてるけど、どうせ怪しい仕事だって思ってたし、詳しくは聞いていない。

「……」

何も知らないことに驚いてるのか、店員さんは目を見開いてあたしをじろじろ見る。そのとき、だ。

「なに口説いてんだ、エツ。俺のお気に入りだ、って言っただろ?」

突然、真後ろから手を回された。

「ちょっ」

顔にかかる腕を、急いでペチペチたたくあたし。すると、透吾はパッと離れて、隣の席に腰かける。