ティアラ2

「おー、珍しい! いらっしゃい!」

店内は全体的に薄暗く、明るいのは店員たちが立つカウンターだけ。

あとは、テーブル上のキャンドルと、天井から吊るされた小さなランプでムーディーに演出されてある。

「ひっさしぶり」

入ってすぐに声をかけてきた男性の店員が、テーブルに腰かけたあたしたちの前に、水を置いてくる。

「たまには顔を出しとかないとな。今日は車だから飲まないけど」

「……」

カラカラになったのどを潤わせたくて、ひと口飲むあたし。

「で、透吾、なににする?」

「テキトーに持ってきて」

「了解」

仲よさげ。この店員さんとは知り合いなのかな?

ふたりの会話を聞きながら、あたしは膝に乗せていた鞄を、横の椅子に置き直す。