雑誌を持つ手が震える。思い出すのは、カフェで見た……嬉しそうな直子の姿。「あたしもあんなふうになりたい」と思えば思うほど、視界が涙でぼやけた。

「こんなとこで泣くなよ」

彼は脚立をおりてそばへくると、あたしの頭に手を置く。

顔を覗き込んできたから、涙目で睨んだら、大きなため息をつかれた。

腕を組んで、本棚にもたれかかる篤紀。

「日数を増やしたのは、できるだけ早く……家を出るためだよ」

眼鏡を外して目頭を押す彼に「え?」と聞き返す。すると、篤紀は優しい表情をした。

「お前、弥生のこと……ずっと気にしてるだろ? だから早く家を出て、ひとり暮らしをしようと思ってるわけ」