ティアラ2

「ナイス」

彼はうなずきながらそうつぶやき、ポケットから財布を出した。

そして、中からクレジットカードを抜いて、女性に手渡していく。

ふたりのやり取りをぼんやり見つめていた。けれど1分後、あたしは女性が言った台詞で、ハッと我にかえる。

「まいどあり」

「……えっ」

これ、ぜんぶ買ったの?

紙にサインをして、渡された長いレシートを財布の中に入れた透吾。

口をパクパクして、あたふたするあたし。

「さ、行こ」

そう言って、彼はあたしの背中を押しはじめた。

見送る女性は「はい」と笑顔で、黒い紙袋を渡してくる。

「……」

いつの間にか袋の中に片付けられていた、あたしの服。