ティアラ2

助手席のこんなところに私物を置くのは、彼女しかいないよね。

……あたしなんかを乗せて大丈夫なのかな?

そういえば、あたし、家族以外の男のひとの車に乗るのって初めてかも。篤紀は免許すら持ってないし……。

「はぁ」

やめたやめた。いま、篤紀のことを考えるのはよそう。思い出すだけでムカムカする。

「このあと、何かあるの?」

「えっ?」

深々とため息をつくあたしに、話しかけてきた透吾。ふいをつかれ、思わず声が裏返った。

「……ないけど」

恥ずかしくなって、1回、咳払いをしてから答え直す。