ティアラ2

「君さ……俺のこと、どんな人間だと思ってんの?」

どんなって……。こんな高級マンションにひとりで住んでて、左バンドルの車に乗ってる若い男なんて、ろくでもないやつに決まってるじゃない。

「早く走りなさいよ! 希望ヶ丘の交差点まででいいから!」

「……はいはい」

疑いつつもシートベルトをおろす。

接続完了の音と共に、アクセルを踏む透吾。車はゆっくりと、次第にスピードを上げて走り始めた。

車内に漂う、柑橘系の上品な香り。

無事に着くことを祈りながら、外を見る。雨粒で、景色は水玉模様。

窓を開けたくなって、スイッチを探す。そのとき、ピンク色の何かが目に入った。

「……」

なんだ、いるんじゃん。

ドアを閉めるとき、小指に何か当たった気はしていたけれど。

……マニキュアの瓶だった。