夕方、大学を後にしたあたしは、その足でレンタルショップ「TAMAKI」へ向かった。篤紀は高校時代から、この店の2階の本屋で働いてるの。

「そんな金、どこにあんだよ?」

脚立をのぼりながらの、冷たい返事。

「……貯金、とか?」

このフロアで見つけた旅行雑誌を広げるあたしは、苦笑いで首をかしげた。

「へー。化粧品に金を使ってばっかのお前が、貯金ねぇ」

本棚の上から段ボールを下ろす彼は、嫌みったらしい口調でクスクス笑う。

うぅ……お金のこと、すっかり忘れてた。

「でも、雪景色が……」

「夏に雪が降るわけねぇだろ」

え、そうなの? 北海道ってずっと雪だと思ってた。「ばかかお前は」とため息をつかれ、しょんぼり。