ティアラ2

素直に、誉められていることを嬉しいと思えた。

「それくらい常識です。これ見て」

ポーチから自慢のケースを出した。かさばらないように短くできていて、持ち手を引き伸ばして使うブラシのセット。

「このふたつはチークで、ここからここまでがシャドウブラシ」

おととし、お金を貯めて購入したもの。「プロのメイクアップアーティストも使ってるんですよ」と、買うときに店員さんから聞いたんだ。

「あと……」

もっと見てほしくて、他に何かあるかなとポーチの中をごそごそ探す。

すると、ブラシを眺めていた透吾が、いきなり声を出さずに笑いだした。

きょとんとして「何?」と訊ねる、あたし。透吾は口をきゅっと引き締めて、こう言った。

「単純だね」