「み、認めてないわよ!! 認めてないけど、かいてたことにしなきゃしつこいし!! もしもの話よ、もしもの!!」

むっかつく、この野郎っ!

声を荒らげるあたしの横で、篤紀は耳を手で塞ぎながら「うるせえ」と言って、また笑う。

「かいてない、かいてない、かいてない!」

「わかった、わかった、わかった!」

いつも余裕ぶってて、いつもあたしばかりが恥ずかしい思いをしていて……。

「もういいっ」

つまらない、と思った。

否定するのをやめて口を尖らせる。すると突然、髪の毛を撫でられた。

「お前らしいなって思ったよ」

あ……この顔。

「見た目は大人っぽくて綺麗なのに、中身はすっげえ子供で……すっげえ腹黒い」

ひとを見下すような憎たらしい表情が、絵本の王子様みたいに優しくなる。

普段は小馬鹿にしてるくせに、たまにこうやって誉めてくるの。


篤紀がこんな態度をとるときは、あたしたちがラブラブになれるサイン。